新潟の秋の味覚、ル レクチエ。栽培面積は日本一を誇り、県内では新潟市南区を中心に2,000t以上が収穫されています。その発祥の地であり、名産地として知られる白根地区でル レクチエを生産している小菅さんにインタビューしました!
ルレクチエの美味しさの秘密は?
ル レクチエといえば、芳醇な香りと豊かな甘み、とろけるようなやわらかい食感が特徴。一度食べたら忘れられない、高級感のある味わいです。ただ、日本なしとは異なる栽培方法や病気に弱い性質などの難点も多く、栽培するのが難しい品種であるのも事実。さらに、10月中旬~下旬にかけて収穫されたル レクチエは、40日間にも及ぶ追熟(ついじゅく)を経て、独特の風味が生まれます。出荷前に行なうこの工程も含め、生産農家が手間をかけ、愛情も注いでつくりあげていることが美味しさの秘密なのです。
ルレクチエの栽培は剪定が決め手
1月~3月にかけて枝の剪定が始まり、雪解けとともに授粉作業に入ります。花粉を付けたあとは、実がなるまでの間、日々、農薬防除や成長を促すための肥やしを与えたりします。栽培の最重要ポイントは枝の剪定ですね。単に枝を切ればいいわけではなく、ベテラン農家は何年も先のことを考えてこの作業を行ないます。弱ってきた枝は2~3年後には役目を果たせなくなる。つまり、今年だけでなく来年、再来年にどうなっているか、先を見通しての剪定作業が必要なんですよ。私は(兼業時代を含め)10年以上やってきましたけど、まだまだ勉強中の身。周りのベテラン農家さんに教えてもらいながら、もっともっと技術を向上させていきたいですね。
栽培するうえで難しいこと
剪定の段階で枝や花芽を残し過ぎると、実がつきすぎてしまい、ほったらかしにしてしまえばとんでもない量がなるんですよ(笑)。でも、現在、白根地区では大玉生産に力を入れていますし、量より大きさや質を重視したい。だから、たくさん経験を積み、ル レクチエが大きく育つようにいい塩梅で剪定しなければいけません。また、収穫後に行なう「追熟(ついじゅく)」の工程も油断禁物。そこで手を抜くと、せっかく大きいものが取れても品質が落ちてしまいます。店頭に並ぶ11月下旬~12月中旬にかけて、最高のル レクチエを均一な量で出荷し続けられるように最後まで気を緩めないことが大切です。
味を左右する「追熟」へのこだわり
10月に収穫されたル レクチエは、温度や湿度を徹底的に管理しながら、1カ月以上、専用の冷蔵庫で保管します。西洋なしの代表格であるラ フランスの追熟は15日~20日に対し、ル レクチエはその倍以上の40日間を要します。出荷前に予冷したル レクチエを常温にさらすことで生じる温度差が甘みと香りを引き出す決め手。最初はその現象がとても不思議に思えましたが、消費者の方に完熟したものを届けるためには大事な行程なんですね。また、市場に出る時期を逆算しながら、追熟を行なうタイミングを微妙にコントロールしていかなければいけません。そういうところも含め、40日間の追熟は欠かすことのできないひと手間だと実感しています。
今後に向けて考えていること
個人的には、農薬や除草剤を極力使わない方向で栽培していきたいと考えています。これらをまったく使わないとル レクチエが病気になったり害虫にやられてしまったりするので、どこまで量を減らせるか、試行錯誤が続くでしょうね。だけど安全性が第一ですし、消費者の皆さんに安全で美味しいル レクチエを届けていきたいです。また、もっと全国的に知名度を上げていけたらと思います。ブランドPRにも力を入れていけばまだまだ可能性はあるはず。新潟県民は恥ずかしがりで謙虚なイメージですけど、自信を持って県外にいる親戚や知り合いに「ル レクチエは美味しいんだよ! 食べてみて!」と伝えてほしいですね。
やりがいを感じる瞬間は?
枝の剪定から始まり、収穫、追熟を経て出荷まで約1年間、愛情を込めて手間暇かけて育てますから、毎年、出荷解禁日はとても緊張感があります(笑)。で、出荷が始まり、直売所などで自分のル レクチエを並べているときに「今年も美味しいね!」というお客さんの声が耳に入ると、誇らしい気持ちになりますよね。やっぱり(一連の栽培)作業は大変ですし、販売期間も短いし、規模を縮小しようかと思い悩んだ時期もあったんですけど…、それでも、消費者の方の「美味しい」という言葉がとてもうれしくて――「なんとかル レクチエは頑張ろうか!」と自分を奮い立たせながら今に至っていますね。
美味しく食べるコツ~生産者に聞く~
ジャムにするのもおすすめですけど、王道は、やっぱりそのまま食べること。実のくびのところが茶色くなって、ル レクチエ特有の香りが感じられたら食べごろです。常温で熟したと思ったら、冷蔵庫で少し冷やした方がより美味しいと思いますよ。やわらかい食感が好きな方は、さらに色が濃くなるのを待ってから食べると良いです。あと、ル レクチエは傷みやすいので触りすぎには注意してください。