新潟産の西洋なし「ル レクチエ」とは?
お米や日本酒のイメージの強い新潟県ですが、実は西洋なしの出荷量が全国第2位の『西洋なし県』。西洋なしといえば「ラ・フランス」が有名ですが、新潟県では「ル レクチエ」を中心に生産しており、全国のル レクチエの約8割が新潟県内で栽培されています。甘くとろけるような食感と芳醇な香りが特徴で、西洋なしの最上位品種として位置づけられ、美しいフォルムや滑らかな食感、上品な芳香から「西洋なしの貴婦人」と讃えられています。栽培が難しく、11月下旬~12月下旬までの短期間しか出回らないため“幻の西洋なし”とも呼ばれ、お歳暮やクリスマスの贈答品としても高い評価を得ています。呼び名も、当初は「ロクチー」「ルルクチー」「ルレクチー」など様々でしたが、昭和58年に「ル レクチエ」に統一され、平成18年には県のフード・ブランドに選定されるなど、新潟を代表する果実として親しまれています。
代表的産地は、新潟市南区(旧・白根地区)
全国のル レクチエのうち新潟県での生産が80%以上を占め、県内では新潟市、加茂市、三条市、佐渡市などで年間2,000t以上が生産されています。その代表的産地が、新潟市南区。信濃川と中之口川が流れており、かつては洪水で人々を苦しめましたが、開墾・排水技術の発展によって今や農産物を育てる水供給の要に。また、洪水が起きた際に川から肥沃な土砂が流れ込み、その結果、ル レクチエをはじめとしたさまざまな果樹栽培に適した土地へと変化を遂げたのです。
日本初! ル レクチエの栽培はいつから始まった?
ル レクチエの栽培が新潟で始まったのは、今から約120年前の明治時代。古くからなしの産地だった新潟県旧白根市(現・新潟市南区)のなし農家・小池左右吉氏が原産地のフランスから数十種類の苗木を取り寄せて栽培を始めました。果物の生産や研究に熱心だった左右吉氏は、1902年、旅行で訪れたロシアのウラジオストクで出会ったル レクチエの味に衝撃を受け、栽培を決意したといいます。ただ、日本での栽培事例がなく病気にも弱いなど、ル レクチエの栽培は一筋縄ではいかず、幾多の試行錯誤を重ねながら安定生産に向けて栽培方法を確立していきました。出荷前に行なう「追熟(ついじゅく)」もそのひとつです。
濃厚な甘みととろけるような食感を生み出す「追熟」
芳醇な香りと濃厚な甘み、なめらかな食感が魅力のル レクチエ。この味わいの秘密は、収穫後から出荷までの期間に行なわれる「追熟」という工程に隠されていました。西洋なしは樹上では完熟しないため、収穫されたル レクチエは、しばらくの間ゆっくりと寝かせて、おいしく熟すのを待ちます。その間、約40日。これが「追熟」と呼ばれる西洋なしにとっては非常に大切なステップです。
10月中旬~下旬にかけて収穫された実は、まだフレッシュさが目立つ緑色。その収穫後に、品質を高いレベルで均一にするべく、温度や湿度に配慮しながら、20℃以下に設定された冷蔵庫などで保管されます。約40日間予冷した「ル レクチエ」はデンプン質を糖に変え、色合いもブライトイエローに変化。出荷前に常温の環境に置くことで、その際に生じる温度差がトリガーとなり、ル レクチエ特有の甘みや香りがさらに生み出されるというわけです。
日本で栽培されている西洋なしは30種類近くありますが、その全てが生産者の手によって追熟が行なわれているとは限りません。新潟産のル レクチエは、収穫した後も手を抜かず、追熟の工程に力を注ぎます。手塩にかけて育てた自慢の逸品。時間と手間はかかりますが、消費者の方においしく味わってもらうためのこだわりです。
新潟産ルレクチエの「旬」
旬は11月下旬から12月中旬頃。10月中旬~下旬にかけて収穫されたル レクチエは、約40日間の追熟を経て店頭に並びます。実のくびの部分が茶色に色づき、ル レクチエ特有の甘い香りがし始めたら食べごろです。やわらかい食感が好きな人は、完熟したバナナのような色に熟すまで待ってみるのもおすすめ。繊細な果実なので、できるだけ優しく扱いましょう。