
12月2日、東京都豊島区にあるシェアキッチンを完備したRYOZAN PARK GRANDでル レクチエに関する勉強会が開催されました。
勉強会の目的は、「ル レクチエとは一体、どのような果物なのか?」を今一度、理解していただいたうえで、ル レクチエを使った商品を提供する店舗を増やし、一般の方々にそのおいしさを知っていただくこと。
当日は東京で腕を振うシェフやパティシエなど、9名が勉強会に参加。すでに、ル レクチエを取り入れた商品を提供しているお店もあれば、現在、使用を検討している方などもいらっしゃるということもあり、まずはル レクチエの基本的な特徴等を新潟県農林水産部食品・流通課 主任の森山から説明しました。


「生産量が限られている希少な果実であること」「追熟は約40日間」「全国のル レクチエの約8割が新潟県内で栽培されていること」「冷蔵庫だと香りが飛んでしまうので、保存は涼しい玄関で」といった基本的な情報に加え、生産者が誇りをもって育てている新潟のブランド品目におけるフラッグシップ的存在であること等を説明しました。
そして、いよいよキッチンに場所を移して、今回の勉強会の講師を務める、東京都中央区にあるフランス菓子店のOccitanial(オクシタニアル)のパティシエ、中山和大さんの実演がスタート。

中山さんは、国内外のコンテスト受賞歴も多く、お菓子の世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」に日本代表として2度出場しているスゴイお方とあって、参加者も緊張気味と思いきや、フランクな中山さんの語り口に、終始和やかな雰囲気に。


追熟の見極めが難しいという現場の課題に対し、完熟手前の状態でもおいしく提供できる実践的なメニューを紹介いただきました。
タルト生地の代わりに春巻きの皮を使用し、短時間でパリパリとした食感を生み出す『春巻きのタルト・ポワール』や、通常廃棄される皮や種周りから香りを抽出したシロップ作りも披露し、食材を無駄なく活用するアイディアを参加者に共有しました。
春巻きのタルト・ポワール
★レシピは最下部に記載しています


好みのサイズにカットした春巻きの皮に、溶かしバターを塗り2枚重ねて160°Cのオーブンで20分焼成。春巻きの皮は湿気に弱いので、提供直前にクリームと追熟したフレッシュのル レクチエを乗せて完成。
ル レクチエのドリンク
★レシピは最下部に記載しています


続いて実演いただいたのは、水分が多く繊細なル レクチエの特性を見極めた『ル レクチエのタタン』と『ル レクチエのテリーヌ』。
『ル レクチエのタタン』は、焼くと溶けてしまうことを防ぐために、ゼラチンを加えて冷やし固めることにより、形と食感を維持する手法を提案。
一方の『ル レクチエのテリーヌ』では、ル レクチエに日本酒のような香りを感じた中山シェフは、香りのペアリングで同じ新潟県産の日本酒のジュレをつくり、スライスしたル レクチエのコンポートとともにテリーヌにした。フレッシュな状態では水分が分離しやすいため、コンポートを使用することで滑らかな食感を安定させ、素材の良さを引き出すことを意識したという渾身の一品。
ル レクチエのタタン


ル レクチエを5mm角にカット。そして、バターとグラニュー糖を鍋で火にかけてキャラメルを作る。ル レクチエを加えしっかり火を通したらクリーム、ゼラチン、グラニュー糖を加え、型に流して冷凍。型から外して解凍したタタンを焼成した春巻きに乗せて完成。
ル レクチエのテリーヌ


日本酒を火にかけて沸騰したら、日本酒に直接火をつけてアルコールを完全に飛ばす。水、グラニュー糖、ゼラチンを加える氷水で冷やし、とろみがついたら型に流しながら薄くスライスしたコンポートを交互に入れる。一晩休ませて固まったものを薄くスライスして柚子の皮を少量振りかけて完成。
参加者は、すべてのスイーツを口にし、中山さんのアイディアのおもしろさ、そして、ル レクチエのおいしさを噛み締めていました。


最後に参加者ひとりひとりから、勉強会についての感想をいただきました。「ル レクチエの端材で作るドリンクは早速、自店で提供したい」「パリッとした食感の春巻きの皮と口溶けするようなやわらいル レクチエの食感が絶妙で、大変勉強になりました」など、前向きなコメントばかり。勉強会後の参加者の表情を見ると、有意義な時間を過ごせたのではないかと思います。
中山さんから勉強会を通しての感想

追熟管理等の難しさから「お菓子には使いにくい果物」という認識だったのですが、今回講師を務めることになり、レシピを考案するにあたり、さまざまな調理法を試してみました。追熟を終えていないル レクチエの使い方などの可能性を感じることができましたし、現場の声を参加者に伝えることができたかなと思います。参加者の反応も良かったので、ひとまずホッとしています。
勉強会の終了後に2名の参加者から、今日の感想などを伺いました!
まず、最初はPâtisseRiz Arti(パティスリ・アルティ)のパティシエ、小野坂さん。小野坂さんは新潟県出身で、米粉を作ったケーキをお店で提供しています。

「完熟のル レクチエは、そのままでおいしいので、私の店なら手を加えずショートケーキにして出したいですね。ただ、完熟を管理するのは難しいので、追熟途中だったら中山シェフのようにタタンにするのはいいなと思いました。固めるというのは応用が効きやすいと思いました。中山シェフは、パティシエは、プラスしていく仕事とおっしゃっていました。私も同じように考えているので、良い方向にプラスしていくなら完熟手前の方が扱いやすいと思いました」。
続いては、Restaurant TOYO Tokyoでパティシエとして働く淺野さん。

「現在デザートとしてではないのですが、11月24日よりお肉料理の付け合わせとしてル レクチエを使っています。中山シェフもおっしゃってましたが、追熟したル レクチエに手を加えず、そのまま味わっていただくのが最もおいしさが伝わるでしょうし、その方がお客様も喜ばれると思いました。まだまだ、ル レクチエを食べたことがない方も多いと思うので、まずは生の状態のル レクチエを味わっていただく機会を増やし、認知度が高まることによって、さまざまル レクチエの使用方法が見えてくるのではないかと思いました」。
勉強会が終わった後も参加者は中山シェフのところへ赴き、ル レクチエの使い方などについて積極的にヒアリング。予定時刻よりも30分もオーバーするほど、内容の濃い時間となりました。
今回の勉強会を経て、自店に持ち帰り、どのようなカタチで商品に昇華されるのかが、すごく楽しみになりました。今後の動向に乞うご期待!
春巻きのタルト・ポワールとル レクチエのドリンクのレシピを公開!
【レシピ1】春巻きのタルト・ポワール
[材料]
・ル レクチエ 適量
・春巻きの皮 適量
・カスタードクリーム 適量 市販のものでOK
・溶かしバター 適量
春巻きを好みのサイズにカットし、溶かしバターを塗り2枚重ねて160°Cのオーブンで20分焼成。湿気やすいので提供直前にクリームとフレッシュのル レクチエを乗せて仕上げる。
【レシピ2】ル レクチエのドリンク
[材料]
・ル レクチエの皮 780g
・グラニュー糖 468g
ル レクチエの皮を廃棄せずに冷凍。ある程度の量になったらグラニュー糖と合わせて湯煎にかける。完全にグラニュー糖が溶けたら濾し、炭酸などで割る。